フードマイレージ・環境問題・食育・気になる話題をお届けします。|リーフプロジェクト / LeafProject

伝統野菜サミットin金沢

【第二部】事例報告及び情報・意見交換会

京都府 樋口昌孝 氏
京野菜生産者


[京野菜]
賀茂なす、聖護院だいこん、鷹峯とうがらし、鷹峯ねぎ、辛味だいこん、など

パネルディスカッション 京都の鷹峯地区で、約400年続く専業農家の14代目という、樋口さん。 「今回の出演者の中では、唯一の農家です!」と、 冒頭に、誇らしげに語った様子が、なんとも印象的でした。

現在、樋口さんは、約90アールの畑で、 年間約40種類の京野菜を中心とした野菜を育てているそう。 実は、樋口さんの畑では、代々樋口家だけで受け継がれてきた 希少な京野菜の栽培も行っているそうで、 その種を守っていくことも、樋口さん親子の使命のようです。 ちなみに、樋口さんのお母さんは、今でも、 大八車に野菜を積み行商をしている「名物農家さん」。 新聞やテレビに取り上げられ、地元でも非常に有名だとか。

そして今回、樋口さんのお話の中でも 特に興味深かったのは、ある京都の料亭でのお話でした。 数年前、樋口さんご自身が、京都の高級料亭に行った際のこと。 目の前に並んだのは、一人2〜3万円もする高級なお料理。 しかし、にも関わらず、口を付けるたび、その料理に不満を覚えたそうです。 「こんなに高いお金払って、まったく美味しくない!」。 そして、樋口さん。直接、料亭の料理長に、その旨を伝える行動に。 しかし、その際、返ってきた言葉は、思いもよらなかった言葉。 「本当に柔らかいネギ、立派なカブは、市場にはあらしませんねん」。

実は、寂しいことに、今では京都の市場でさえ、 美味しい京野菜が手に入りにくい状況になってきているとか。 「京野菜は、俺が守る!」、そう力強く宣言された樋口さんは、 京野菜を守り続けることを、それを機に、より強く意識するようになったそうです。

大阪府 長谷川寧子 氏
保存会・玉造黒門越瓜出隊代表


[なにわ野菜]
玉造黒門越瓜(たまつくりくろもんしろうり)、天王寺蕪、金時人参、田辺大根、源八もの(芽じそ)、など

なにわ伝統野菜を使ったお惣菜バーの女将さんでもある、長谷川さん。 カフェやケータリング、イベント講師などの活動を通じ、 なにわ野菜のPRにも努める、パワフルな若き女性です。

現在、なにわ野菜と認定されているのは、8品目。 約100年前から大阪市内で栽培されてきた野菜のうち、 現在も栽培され、種子の保存が可能なものを「なにわ伝統野菜」と認定しているそうです。 ちなみに、8品目のうち、6品目に、大阪の知名が入っていることも、なにわ野菜の特徴。 しかし、残念なことに、なにわ野菜は、大阪の人でも知らない人が多いのだとか……。

更には、「大阪のど真ん中で作られた野菜なんて、食いとうない」、 (「都市で作られた野菜」=「汚い」というイメージにより) という地元の方も多く、なにわ野菜を作る農家も減少してきているのが現状。 今は、なるべく加工品にカタチを変え、普及に努める動きもあるそうです。

そのような流れも受け、若き長谷川さん自身、 次世代へと、伝統を繋げていくために、新たな試みを実施。 地元の高校生と一緒に「なにわ野菜クッキー」を開発し、 なんと、文部科学大臣賞を受賞したそうです。 今回、会場にも試食が置かれていましたが、とても可愛らしいカタチをしたクッキー! 長谷川さんのように若い方が、「らしい」カタチで伝統を継承していくこと、 とても意味のあることだと思いました。

熊本県 北亜続子 氏
野菜ソムリエの会熊本 前代表


[ひご野菜]
水前寺もやし、水前寺菜、熊本京菜、熊本長にんじん、春日ぼうぶら、水前寺のり、など

ひご野菜 野菜ソムリエでもあり、 「フードマイレージ実践講座・西日本事務局」の代表でもある、北さん。 政令指定都市を目指す熊本市において、 「ひご野菜の復活は、地域の活性化に繋がる大きな切り札」と、 イベント企画や料理提案を手掛けていらっしゃいます。

現在、15品目を指定している、ひご野菜。 「古くから栽培されているもの」「風土にあっているもの」 「食文化に関わるもの」「地名・歴史に因むもの」、 この4つが、ひご野菜のコンセプトだそう。 しかし、今となっては生産者が少ない野菜も多く、 ほとんど店頭に並ばないことも、今の課題だそうです。

また、熊本市は、68万人もの市民を抱える都市でありながら 非常に農業も盛んである一方、「農産物の直売所」が非常に少ないことも現状。 「観光事業とコラボレーションしながら、もっと、直売所を!」と、 北さんは、力強くお話をされていました。

そのような中、これまでの積極的な取り組みとして、 「くまもと食農塾」というバスツアーの開催や「新春ひご雑煮会」の開催の事例を紹介。 熊本農業高校「野菜クラブ」と一緒になり、地元の農家を訪問しながら、 代々受け継がれてきた種苗を分けていただく活動も行っているとか。 もちろん、分けていただいた種や苗は、若い担い手が、大切に育てることを約束。 「水前寺もやし」や「熊本京菜」などを栽培し、学校給食に出す試みも実現したそうです。

レポート・文 : リーフプロジェクト 神林春美

<<前のページ

バックナンバーはこちら>>


HOME
PAGE TOP